測定障害に運動分解!小脳性運動失調の症状について

2018年9月3日

運動失調を調べてみたけど、う~ん、なんだかしっくりこないという皆様、こんにちは。

小脳性運動失調は複雑ですね。

私も多くの小脳性運動失調を診てきましたが、とても現象を捉えにくい徴候だと思います。

検査の記載も陽性か陰性、(+)か(-)のように単純になりがちで、リハビリのプログラムも立てづらいのではないでしょうか。

そこで今日は、運動失調の症状や評価方法などを、できるだけ解りやすくお話してみようと思います。

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運動失調とは

運動失調とは、正常な機能の進行に、混乱が起こることを指します。

小脳は、運動を調整する部位のため、ここが障害されることで失調が出現するのですね。

これは感覚性の運動失調とは違い、入力(入る情報)は正常にも関わらず、出力する側の問題であることを意味します。

運動失調があると、動作はぎこちなくなり、歩行ではふらつきが出現します。

見た目で異常だと、すぐにわかるような徴候、それが運動失調です!

よって評価をしてみて、失調が、

 ある or ない

という情報は、はっきり言って不要です。

なぜなら、 小脳障害=運動失調 となっているので、わざわざ確かめる必要がないのです。

骨折した方に「本当に痛みがあるか」を確かめ、やっぱり痛みがあった!とドヤ顔しているようなものです。

運動失調で起こる症状

誰が見ても異常だと思える運動失調ですが、それをより具体的に捉えるため、症状の1つひとつを知って欲しいと思います。

測定障害について

測定障害は、何かに向けて運動を行った際に、そこまでの距離やブレーキのタイミングなどの見積もりを、見誤ってしまう現象になります。

指鼻指試験であれば、相手の指と自分の指をくっつけようとした時、相手の指を超えてしまったり、反対に指につく前に動作が終わってしまうことを指します。

測定過大では見積もりよりも大きい運動になり、測定過小では小さい運動になります。

よって、この検査で分かることは、患者さんが頭で思い描いている動きと、実際の関節運動にどのような違いがあるのかが評価できます。

運動分解について

運動分解は、文字通り1回でできる運動が、2つ以上に分解されてしまう現象です。

例えば肘関節を曲げるような簡単な運動でも、滑らかな関節運動が起こらず、

 曲がる ⇒ 止まる ⇒ 再度曲がる

といったように複数の運動に分解されてしまうことで、ぎこちない動きになってしまうのです。

回線が遅い時の、カクカクっとしたコマ送りのような動き、これが運動分解になります。

「肘を曲げる」という1つの運動を、
  ① 30°まで曲げる
  ② 60°まで曲げる
  ③ 100°まで曲げる
  ④ 最終域まで曲げる
というように、複数に分解されて行われてしまうのですね。

また、運動の軌道によっても、運動分解を見極めることができます。

手を伸ばす際、目標物に到達する!という1つの運動が、ギザギザの軌道を描くことにより、右、左、右のように、分割されてしまうのです。

図のように、上下の軌道を描くのであれば、肩関節の屈伸動揺により、運動が分解されたことになります。また、側方へ動揺しているのであれば、肩関節の内外転や内外旋の失調によるものだと判断できます。

このように、運動が分解された方向で、失調の影響を受けている関節運動を、予測することができますね。

変換運動障害について

これは、手でキラキラ星をやるような、

前腕の 回内 ⇔ 回外 など、切り返しが必要な運動で出現します。

特に切り返す速度が上ってくると、徐々に動きが小さくなったり、左右のリズムが崩れてきます。

小脳疾患では、運動の処理能力が低下するといわれております。そのため素早い反復拮抗運動では、処理が追い付かず意図しない動作が出現しやすいのですね。

この障害に関しては、どのような運動が苦手なのか、左右どちらが遅れるのか、といった評価をしていきましょう。

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協働運動不能について

この現象は、運動に参加するそれぞれの筋が、協調的に働けないということです。

教科書では、背臥位から腕を組んだまま起き上がると、足が浮いて起き上がれない!という説明で終わっています。

これは身体を起こそうとした時、伸展筋群よりも屈筋群の方が、優位に働いてしまっていることが原因です。

起き上がるのであれば、下肢の屈筋群は大殿筋を置き去りにしないよう、ゆっくりと優しく収縮しなくてはいけません。

やっぱり協調性が失われると、必ず協力しないヤツ(筋)がでてくるのですね。

運動失調における筋収縮はこちらを参照!

企図振戦について

これは動作時の振戦に分類されます。

指-鼻-指試験などで、相手の指に合わせようとすると、指先がふるえてくる現象です。

これは企図振戦と呼ばれるもので、先程の変換運動障害と同様、

 ちゃんと指をつけなきゃ

 ズレないようにしなきゃ

といった心理的な負荷が、身体症状として現れているのだと思われます。

再評価などに役立てるためにも、ブレている幅をcmで記載しておくと良いと思います。

その他の症状

小脳の障害では、運動失調だけでなく、それ以外にも様々な症状が出現します。

有名な部分だけ紹介しておきます。

筋緊張の異常

脊髄小脳変性症や、多発性硬化症など、運動失調と痙縮が同時に出現する病気もあります。

しかし純粋な小脳のダメージでは、筋緊張は低下するとされています。

一概にはいえませんので、筋緊張検査で実際に評価してみましょう。

筋緊張検査はこちらの記事で!

構音障害

小脳の障害により、発生に関わる筋肉や舌の運動失調により、言葉のもつれが出現します。

それにより、

 つらら きつつき たたたた

など、特定の音が連続する言葉が発しにくくなります。

また、突然大声になる爆発性言語や、

「オレ、オマエ、スキ」

のように、

音節が途切れる断綴性(だんてつせい)言語などがあります。

書字の障害

字を書くのはとても繊細です。

神経も使うので、運動失調が増強しやすいです。

先程説明した、測定障害、運動分解、企図振戦など、色々な要素が出現してしまうと、字は大きくなり(大字症)、線がはみ出たり、波を打ったりします。

もしも書字の練習をするのであれば、机に置く肘の位置や角度、太い柄にした鉛筆など、どうやったら字が書きやすいのかを評価しましょう。

歩行の障害

失調がある方の歩行では、片足を挙げて単脚支持になる瞬間、左右や前後にふらつきます。

酩酊歩行や失調性歩行などと呼ばれており、真っすぐ歩くことが困難になります。

ジグザグと基線が乱れ、左右に揺れながら進みます。

どのような荷重移動が適切なのか、瞬時に判断することが難しいため、毎歩行周期で違う姿勢で歩くことになりのです。

私はお酒が弱いので、すぐに酔っぱらって千鳥足になります。

この時だけは、運動失調を呈する患者さんの気持ちが、ほんの少しだけ解るような気がしますね。

運動失調に対するリハビリ

教科書やネット運動失調を調べると、

 ・フレンケル体操をしましょう!

 ・四肢近位部への緊縛帯が良い!

 ・四肢遠位部に重錘をつけよう!

 ・PNFによる促通が有効である!

こんなんばっかです。

失調を呈する患者さんは、様々な症状で困っているのに、たったこれだけの対応策しかないのでしょうか?

確かに対応は難しいですが、しっかりと検査、評価をしていけば、患者さん個々の失調症状を理解できるはずです。

失調にはこのアプローチだ!これは絶対にあり得ません。

目の前にある運動失調には何が有効なのか、これを知るためには、今日紹介した運動失調の現象について理解を深めていくしかありません。

難しい徴候ばかりですが、1つずつ手の内に入れて頂き、運動失調に関して少しでもしっくりいってくように頑張って下さい。

それでは今日はこの辺りで、アドュー!

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