人工股関節置換術の禁忌肢位!屈曲、内転、内旋はなぜダメなの?

2018年8月30日

患者さんの股関節を、毎日、動かしているセラピストの皆様、こんばんは。

どのような分野で勤めていても、人工股関節の患者さんと出会う確率って高いですよね。

特に、実習でケースになることも多いですので、注意点や動かし方などを再確認して、脱臼に関するリスクについて復習してみましょう。

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人工股関節とは

大きく分けて、2種類の人工関節があります。

 ・人工股関節全置換術(THR)
  骨盤側の臼蓋に、人工の受け皿を装着

 ・人工骨頭置換術(BHA)
  大腿骨側のみ、金属のステムを装着

前者は、変形性股関節症により、臼蓋までダメージを受けた方が試行する術式で、後者は、大腿骨頸部内側骨折に適応となる術式になります。

脱臼のメカニズム

人工股関節の手術では、後方からアプローチする、後方侵入があります。

その場合、屈曲、内転、内旋の複合的な運動は、脱臼のリスクがあるため、禁忌となっています。

そのため、靴や靴下を履く動作、移乗時などにも、様々な指導が必要になりますね。

まぁ、ここまでは、授業で習ってきたので、誰でも知っていることなんですが、

「なぜ屈曲、内転、内旋がダメなの?」

と聞かれた時、皆さんは即答できます?

「このような運動を避けて下さい」と、患者さんに指導するのであれば、股関節の解剖学、運動学の知識をを使って、メカニズムを理解しておくべきでしょう。

股関節の禁忌肢位

股関節は、大腿骨頭の球の部分と、寛骨にある臼状が、すっぽりとはまる臼状関節です。

そのため、股関節は

 屈曲 / 伸展、内転 / 外転、内旋 / 外旋

の3本の運動軸持つ関節で、かなり自由度が高い運動が可能です。裏を返せば、動きを制限するための組織に、ゆとりがあるという事ですね。

それでは、先ほど出てきた、屈曲、内転、内旋の複合運動が、股関節に与える影響を、1つずつ考えていきましょう。

股関節の屈曲

股関節をまたぐ筋肉は、多く存在しますが、関節を、より強固に固定するのは、靭帯の役目になっています。

股関節を固定する靭帯には、

腸骨大腿靭帯恥骨大腿靭帯坐骨大腿靭帯

の3つがあり、いずれも股関節の前面を、ガッチリ固めてくれています。

これらの靭帯は、股関節を伸展する際に、張力が最大になります。ということは、屈曲をする際には、弛んでしまうことになります。

ジーパンを履いたまましゃがむと、股関節の前面にシワが寄るのと一緒ですね。

よって股関節にとって屈曲という肢位は「緩み」の位置となります。

 ・Close Packed Position(CPP)
     クローズパックドポジション

 ・Loose Packed Position(LPP)
     ルーズパックドポジション

各関節に存在する、締りの位置と緩みの位置。

これらを考えても、股関節屈曲というのは、関節の固定性を犠牲にした運動だ、ということが解かりますね。

股関節の内転

大腿骨頭は、骨幹部から約120~130°傾いた頸部により、斜め方向に向かいながら臼蓋にはまっております。

しかし、この臼状関節は、股関節内外転中間位の時点であったとしても、かぶりが浅いため、適合は不完全な状態となっています。

特に、女性は生まれつき臼蓋が浅く、変形性股関節症になりやすい傾向にあります。


図のように、股関節を内転すると、頚体角も手伝って引き離されるように亜脱臼位となります。

反対に、外転すると、骨頭は臼蓋に深く入り込み、関節としての適合が維持されます。

よって、股関節にとって内転は、歓迎されない運動という事になります。

屈曲で股関節が緩み、内転で骨頭が外れかけるなんて想像するだけで怖いですね。

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股関節の内旋

滑膜関節には関節包があり、股関節にも当然存在します。手術では、この関節包が邪魔になるため、切開または切除します。

昔、整形外科医師に聞いたところ、切開した関節包をしっかり縫い合わせるも、切りっぱなしにするのも医師次第とのことでした。

放っておいても、いずれ再生するから、別に問題ないとのことです…。

股関節の内旋運動では、大腿骨頭は後方を向くことになります。もしも、関節包の再生が不十分な時期であれば、骨頭はむき出し状態になります。

よって、股関節の内旋運動は、この弱い部分に向けて力が逃げるため、骨頭が臼蓋から外れるリスクが高まります。

以上のことが、屈曲、内転、内旋の複合運動が、脱臼姿位となる理由になります。

過屈曲も禁忌肢位!

人工関節となってしまった患者さんには、和式から洋式の生活にシフトするよう指導します。

これは、床での立ち座りや、和式トイレでのしゃがみ動作で、過度な屈曲を避けるためです。

 過屈曲って何度以上なの?

と疑問に思う方も多いと思います。

一概に、何度とは決められませんので、過屈曲した際の関節の動きに注目してみましょう。

関節包内では副運動と呼ばれる、滑り、転がり、軸回旋などの運動が、行われています。

その中に、副運動1型と呼ばれるものがあり、骨の運動が限界を超えた後、さらなる外力を加えることで、随意運動では出せない、特殊な関節包内運動が起こります。

関節運動では、骨制限や結合組織性などのエンドフィールにより、骨が、これ以上運動できない、最終域に到達します。

例えば、大腿骨がこれ以上動けなくなったにも関わらず、さらに外力を加えると・・・、

行き場を失った力により関節が引き離され、適合が不十分となってしまいます。

この、関節の限界を超える屈曲運動を過屈曲と呼びます。当然、限界を超えるのであれば、内転、内旋、外転、外旋の、いずれも好ましくないのは言うまでもありません。

この副運動1型を行さないよう、エンドフィールで止めるためには、経験が必要になります。

日頃から関節包内運動を意識した、ROM-exやモビライゼーションを実施することが、重要だと言えます。

おわりに

我々の職業は、ちょっとした不注意で、患者さんを怪我させてしまう可能性があります。かといって、よく解からないから、過剰に愛護的なセラピーをするのも良いとはいえません。

正しい知識のもと、患者さんの機能や動作を引き出していく必要があります。

今回のテーマのように、教科書で屈曲、内転、内旋を丸暗記するだけでは不十分です。

なぜ、これが禁忌なの?といった疑問を持ち、興味を持って勉強していくことが、成長には不可欠だと思っております。

「THRにおいて術後の禁忌肢位は?」

実習でも頻繁に聞かれる、この質問が来ても怖くないよう、予習して準備しておきましょう。

それでは今日はこの辺りで、アドュー!

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