寝返り動作のメカニズム!回転力の作り方と分節運動を評価しよう

2018年9月3日

患者さんのために、日々、寝返り動作分析を行っている皆様、こんにちは。

この日記では、リハビリ職を目指す学生さんや、新人セラピストに向け、評価の進め方を解説していきたいと思っております。

そこで本日は、起居動作に入っている、寝返り動作について解説していきます。

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寝返り動作とは

小児発達学で習ったと思いますが、人間は、生後、半年を目途に、寝返りを習得します。

最初の頃は、枕に顔が埋もれてドキっとしますが、徐々に頭を起こせるようになりますね。

最初に覚えるのは、背臥位から腹臥位への寝返りですが、その他にも、背臥位から側臥位、または半側臥位への寝返りなどもあります。

普段の寝返り動作

突然ですが、あなたの寝返りの特徴は?と聞かれた時、すぐに答えられますか?

答えられませんよね。

だって、パターンが多すぎるし、無意識にやっているので、記憶に残っていないはずです。

よって、寝返り動作を評価するのであれば、まずは、自分の寝返りが正常なのか?というところから考えていくべきだと思います。

正常な寝返り動作

動作分析に共通していることは、正常からの逸脱を評価する!という点です。

では、寝返り動作の正常って何でしょうか?

この部分が解らなければ、動作を分析していくことができません。

答えは、

 全ての環境で寝返り動作を遂行できる

になります。

この環境という部分は、柵があればできる 調子が良ければできる、といった、条件や制限がないという意味になります。

寝返り動作のメカニズム

動作を評価する時、なぜできないの?という進め方ではダメです。きっと、途中で行き詰まるでしょう。

反対に、なぜできるの?という視点で進めていくと、細かい部分まで分析できるはずです。

そのため、まずはメカニズムを知りましょう。

回転力の作り方

寝返りという動作は、転がり運動です。

ボールが勝手に転がりださないよう、寝返り動作においても、何らかの原動力が必要になります。

その回転する力を知れば、なぜ、コロッと寝返ることができるのかを、理解できるんじゃないでしょうか。

遠心力を利用

回転と言えば、ハンマー投げが思い浮かびます。

背臥位から、上肢を寝返り方向へ振りかぶり、その力に逆らわないよう、同時に身体を回旋させていけば、遠心力を回転力に変えることができます。

頚損患者さんでは、上肢の残存機能を使い、遠心力に頼ることが多いですが、一般的な方だと、この力に頼ることは少ないかもしれませんね。

重力を利用

続いても、上肢の役割が大きくなります。

木こりが、「倒れるぞ~!」と、大きな声で叫んでいるのをイメージして下さい。

木が倒れるように、背の高いものが重心を崩すと、重力によって倒されてしまいます。

図のように、上肢を天井方向へ伸ばし、膝を立てることで、横向きに倒れやすくなるんですね。

背臥位から始まる寝返りの場合、重心が低く支持基底面が広いため、まず不安定を作る必要がありそうです。

床反力を利用

続いての原動力は、床反力になります。

床反力とは、床に叩きつけたボールがバウンドするように、押したものが、それと同じ力で反発してくる力になります。

ちょっと動画を観てみましょう。

こちらは、腹臥位からの寝返りです。

ぱっと見、肘の伸展で身体を持ち上げているように観えますが、タイトルにC6と書いてありますよね。

恐らく、手掌面を床に固定した状態からの、大胸筋の内転運動による、閉鎖運動連鎖(CKC)だと思われます。

その他に、肘を床に押し付けたり、股関節の伸展で床を蹴るパターンもあります。

アコーディオン運動を利用

さあ、ここから一気に難しくなります。

皆さんは、手足のないヘビが、どうやって進んでいるのか、不思議に思ったことはありませんか?

まずは、分節運動の代表である、アコーディオン運動を理解しましょう。

初めは、尻尾側を地面に固定し、頭の方を押し上げます。一相目は伸展運動ですね。

続いて、頭部側を地面に固定し、尻尾の方を引き寄せます。二相目は屈曲運動になります。

このように、運動側と固定側が入れ替わる、アコーディオン運動により、推進力が得られます。

寝返り動作で欲しいのは回転力ですので、この考えを当てはめてみましょう。

まず、上半身と下半身で分けてみます。

一相目は、下半身を床に固定し、上半身を回旋させます。

下半身を固定し、上半身を押し上げるような運動になっていますね。

続いて二相目では、上半身を床に固定し、下半身を回旋させます。

今度は、上半身を軸に、下半身を引き上げるような運動になっています。

このように、回旋といっても、押し上げるような回旋もあれば、引き上げるような回旋があることを、知って頂きたいと思います。

少し難しかったかもしれませんが、我々の寝返り運動は、このように体軸内回旋、もしくは分節運動を使って、回転力を作っているのですね。

回転運動の効率化

さて、回転力の作り方が理解できた所で、運動の効率化という重要な項目に移ります。

面取りをする

ちょと、ティッシュ箱をイメージして下さい。

こいつを転がそうとしたら、角が引っ掛かってしまい大変そうです。

そこで、胸の前で腕をクロスさせ、対側の肩峰を掴んでみて下さい。なんか、背中が丸くなった気がしませんか?

どうせ転がるのであれば、船底のように丸みを帯びている方が良さそうですよね。

支持基底面を狭くする

背臥位はとても安定しています。いや、安定し過ぎていて、逆に動きづらいです。

そこで、不安定にするため、支持基底面を狭くすると、動作がしやすくなります。

先ほどのように、腕を胸の前で組むだけでも支持基底面は狭くなるし、膝を立ててもOKです。

支持基底面の広さと、動きやすさは反比例しますので、気になる方は、こちらも併せてお読みいただければと思います。

重心を高くする

実は、背臥位からの寝返りでは、支持基底面を狭くする行動が、重心を高くする役割を持ちます。

重心を高くするため、頭を挙げれば、同時に支持基底面も狭くなるんですね。

よって、重心を高くすることで、不安定を作り、かつ重力も利用しやすくなるので、一石二鳥ということです。

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寝返り動作の評価方法

寝返り動作のメカニズムが解れば、評価はそれほど難しくありません。

全ての環境で寝返りができれば、正常動作なのですから、色々な条件を試していけば良いのです。

パターンを分析する

寝返り動作を観察した際、そのパターンが、どのような回転力を作り出す運動になっているのか、これを観察しましょう。

その後、違うパターンで寝返り動作を行わせ、その違いを分析していきます。

簡単にできる、少しできる、全くできない、といったパターンが出てくると思います。

 このパターンができないのはなぜ?

 このパターンだと動作が遅くなるのはなぜ?

といったように、その違いを、セラピストが吟味していくことで、動作分析が進んでくことになります。

物的環境を分析する

例えば、上肢を振り回して寝返るパターンしかできない場合、狭いベッドでは遠心力が十分に発揮できません。

また、床を足で蹴りながら寝返るパターンを日頃から行っている場合、柔らかいベッドマットだと床反力が弱くなります。

 この環境だと寝返れないのはなぜ?

 この環境だと動作がヘタになるのはなぜ?

といったように、患者さんの能力と、物的環境の関係性を吟味し、「なぜ?」の部分を紐解いていきましょう。

最大能力は出せている?

リハビリ中、気持ちにゆとりがある時は、コロっと寝返りができても、トイレに行きたい、急がなきゃ!といった焦燥感により、寝返り動作の成功率が下がることがあります。

また、セラピストに促されたらやるが、病棟だとやらない、介助に頼ってしまう、といったケースもあります。

もしも、

 あの人に言われればできる!

 本気を出せばできる!

といったように、最大能力を出すための条件があるのであれば、それも評価対象となりますので、見落とさないようにしましょう。

このように、寝返りのメカニズムさえ理解しておけば、評価はするべき項目は、勝手に浮かんできます。

寝返り動作を評価する機会があれば、回転力の作り方に着目して下さい。きっと、動作を理解することができると思いますよ!

おわりに

寝返動作は、重力を敵に回す動作です。

そのため、セラピストは、回転力を生み出す能力、効率の良い回転運動の条件を、知っておくべきだと思います。

最初は難しいと思いますが、関節運動、筋活動、重力、回転モーメント、床反力など、徐々に運動学の知識を絡めた動作分析に、慣れていって欲しいを共います。

それでは、1人でも多くの患者さんが、横を向いて寝られますように!

今日はこの辺で、アドュー!